実績(解決した事例)

4 労災不支給の認定をくつがえした事例

■労災不支給決定取消訴訟(労働者性) 

 被害者Xさんは、中学校卒業後、母の従兄弟が従事していた塗装作業を手伝うようになり、1949年から2005年まで50年以上、塗装業に従事してきました。

引退後の2006年6月にじん肺管理区分2決定を受け、続発性気管支炎と診断されたことから、労災申請を行いました。

 ところが、Xさんは、1978年以降は、労働者として関わった現場と事業主(請負含む)等として関わった現場が混在していたため、「労働者等としての粉じん作業従事期間が事業主等としての粉じん作業従事期間より明らかに長いと認められること」(昭和61(1986)年2月3日付基発第51号)という要件を満たさないとして、不支給決定を受け、その後、審査請求及び再審査請求も棄却されました。

 そこで、Xさんは、2010年2月にこの不支給決定の取り消しを求めて、大阪地方裁判所に提訴しました。訴訟においては、①塗装作業のどういう工程から粉じんに暴露するのか、また、上②記基準に照らしてXさんが労働者と言えるのかという2点が争点になりました。

 ①については、Xさんから実際に作業で使用している工具を弁護士事務所にもってきてもらい、工具の使い方やそれによってどういう粉じんがどのように発生するのかを詳細に主張しました。加えて、②の点については、勤務先の事業主や同僚、親方の家族等に対して、弁護士で手分けして連絡を取り、勤務実態がどうであったのか、指揮命令関係がどうなっていたのか等を聴き取り、陳述書の形で提出しました。こうした作業の中で、労基署が事業主等として塗装業に従事していたと判断していた期間中に、脚立からの転落事故によって労災を受給していた事実が判明し、これに基づき国に対して労災支給の有無について求釈明を行ったところ、国がこれを認めました。これらの立証活動により形勢が逆転し、裁判所から国に対して和解の打診を行った結果、国が訴外において既に行った不支給決定を取り消しました。これによって、審理の対象たる不支給決定そのものがなくなってしまったので、原告Xさんは訴訟を取り下げ、その後、国が労災支給の決定を行いました。

 そもそも訴訟にまでなっている事案において、かつて国が労働者として認めて労災支給しておきながら、その事実を原告が指摘するまで開示しないという姿勢が問題であったものの、最終的には労災支給が認められ、実質的に勝訴となった事案でした。

 

■労災不支給決定取消訴訟(肺がん)

 被害者Xさんは、1956年から1986年まで、大工として長年働き、アスベストによる肺がんになりました。Xさんが労災申請をしたところ、不支給決定が出されたため、これを取消す行政訴訟を提起しました。

 裁判で、国は、Xさんの肺の石綿小体は998本であり、平成19(2007)年通達の要求する石綿小体数5000本を下回るとして、肺がんはアスベストによるものではないとして争いました。また、Xさんは肺気腫にもなっていたことから、Xさんが喫煙者であると一方的に主張し、それが肺がんの原因であるとしました。しかし、Xさんの石綿小体数は、本体基準とすべき平成18(2006)年基準を満たしており、かつXさんには全く喫煙歴はありませんでした。

 2014年3月26日、大阪地方裁判所は、原告側の主張を全面的に認め、Xさんの肺がんはアスベストによるものであるとして、労災不支給決定は違法であるとしました。国はその後控訴せず判決が確定し、Xさんには、労災が支給されました。